半導体設計支援ソフト(EDA)いろいろ情報をあさっていたらyoutubeにわかりやすい解説がありました。
(1) https://www.youtube.com/watch?v=ihz2WY-E2C8
(2) https://www.youtube.com/watch?v=OmEbzRp_NGg
(1)はEDAの歴史を語っています。電子回路シミュレータSPICEはUCバークレーの電子工学の研究室が作ったものですが、現在はAnalog Devices社がLTSPICEを無料頒布しています。使いこなせると楽ですが、実用上はトランジスタを組み合わせて回路を作ることはなく、色々な集積回路を使います。いまはアナログとデジタルが混じっている高度な回路が多いので(例:スイッチング電源は次々に新方式が出てきて古いICは入手できなくなります。先月ハマりましたが、古い本を参考にしようとしても部品が入手不可で大変困ります)。
Magic(Mead-Conway本のソフトウェア化=明日), Vis(自動検証機能)それから最近はOpenRoad (機械学習による配置機能付き),Chisel,Rocket, OpenRAM, OpenLane, FreePDKなどがあります。知らなかったのでこのyoutubeは助かりました。
2年前の(2)によると、GoogleがSkywarker社と協業してOpenLaneを出す前に、米国防省の研究予算DARPAが$100M(=150億円)を支援してOpenROADというオープンソースのEDAを作らせたそうです。どれも電子回路→トランジスタの段階ではverilogを使っていて、そこからシリコンリソグラフィのプロセスに落とし込むところがちがいます。その部分はやはり知財の問題があってライセンス料が非常に多くかかるようです。CPUの命令セット(いわゆる機械語、設計に直結する)もintelとarmが知財を握っていて、この部分を自分で考えるのは時間がかかりすぎるので、arm社が儲けているわけです。
Webアプリケーションソフト開発は”(Ruby on) Rails”というオープンソースが最先端の機能が使えて強力だがそういうのはEDAでは不可能であり、google-skywarkerの方針どおり、集積度は低くても半導体の試作を安く試せるプラットフォームは有用である、と結論しています。
英語は上記youtubeから。Asianometryというyoutuberですが、週1ののペースで15分くらいの動画を上げています。アジアの人でしょうか。英語が上手です。
“This is much harder when the research and commercial communities are dependent on proprietary IPs that cost a lot of money or require an NDA.”
研究と商業コミュニティが非常に高価な専用の知財に依存していたり、非開示の契約を結ばないといけない場合はずっと難しくなります。
proprietary プロプライアタリ 専用の
IPs = intellectual properties 知財
NDA = non disclosure agreement 結果や過程を公にしないという約束。これを結んで提供を受けると論文を書くのがたいへんになります。分野によっては、過程は書かないで結果だけ書く宣伝のような論文・国際会議発表もあります。実際に動くものを見せれば中身は概略だけ話せばいいというスタンスです。
“Students, teachers, enthusiasts and other niche developers do not necessarily have access to this type of stuff.”
学生,教師,熱心な愛好家やニッチな開発者たちは必ずしもこのようなものが入手できるわけではない。
not necessarily ネセ「サ」リり かならずしも~ない、という言い回しでよく使うので覚えましょう。
“furthermore this reduces the number of people proficient with these tools”
proficient 熟練した、熟達した 「これらのツールのプロ」と訳すのがはまる時もあります。
※ ツールが使える人が少ないこと、が現在日本で問題になっていることで、効率の良い教育による解決が求められています。が、verilogより下流のツールが統一されていないのでどうしよう、というところです。必要な概念を教えればいいと思いますが、細かすぎないようにすること、そもそものアナログやデジタル回路がわかっていないと楽しめないのでそこから教えないといけないです。学生の負担が大きくならないようにエッセンスを抽出する必要がありますが、15回×90分の講義1つでは不足しそうです。悩みどころです。