白血球と警官の割合の比較

年頭にあたり、2024年が皆様にとって素晴らしい年になるようにお祈りいたします。
昨年末は病原体に対する免疫応答の話で終わっていました。今日はその続きで、免疫に関与する細胞たちが頑張っているという話をしましょう。
下記動画は先週出た論文の紹介で、T細胞(リンパ球の一種)が組織をパトロールしている画像です。


この論文は、従来は感染された細胞が出す低分子を探して動いていると考えられていましたが、それだけではなく細胞の変形による力を感じて動いていることがわかったとのこと。感染細胞は変形したり硬さが変わったりすると考えらえるので確かに効率的です。
T細胞も広い意味で白血球に分類されますが、白血球の数は血液中に4000-9000個/μLとされています。血液量は体重の13分の1なので、だいたい5㎏、比重は1.052-1.060g/mLだそうです。したがってだいたい2-4.5×10^10個(200~450億個)あるということになります。組織内やリンパ液(細胞間の液体を集めて血管につなぐ)にもいるはずなので、もう少し多いと思いますが、人間の細胞の数が60兆=6×10^13と考えると、その1/3000~1/1300となります。
免疫細胞は人間の社会では警察官に対応すると思います。日本の警察官は26万人、総人口 1億3000万人の1/500になります。桁は同じですが、人間のほうが警察官が多めなのは興味深いですね。運動する空間が人間は2次元、細胞は3次元であることも関係あるかもしれません。n人隣まで監視できるとすると、2次元だとn^2人を監視でき、3次元だとn^3人を監視できるので、3次元のほうが少なくて済みます。

英語は https://www.science.org/doi/10.1126/sciimmunol.add5724 から。
tissue-resident 組織に常在している
surveilling 監視している 動詞は surveil 名詞は surveillance
organs 臓器
migration 鳥の「渡り」、移動
chemoattractant 誘引分子
adhesion molecules 接着分子
facilitate 促進する
salivary gland 唾液腺
motility patterns 運動パターン
virally infected ウィルスに感染した
changes in mechanical loads 機械的負荷の変化

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