スペックルパターンと位相問題

自由電子レーザー自身も技術的に面白そうですが(特にキャビティを作るための半透鏡をどうしているか?)、それはまたの機会に調べることにして、1分子からの干渉パターンによる構造決定法を見てみましょう。
レーザーは可干渉性(コヒーレンシー)が高いので、散乱体が複数あるとその周りに干渉パターンができます。可視光のレーザーを壁などに当ててスポットを見るとギラギラした明暗の模様が見えませんか?これをスペックルパターンと言い、壁の細かい凸凹からの反射光が干渉したものです。
スペックルパターンはは波長程度の動きを拡大して反映するので、いろいろなセンシングに使われます。
https://en.wikipedia.org/wiki/Speckle_(interference)#Speckle_pattern


逆にレーザーを撮像の照明に使うときにはスペックルが邪魔になりますが、その場合は光ファイバーに導いたり鏡に反射させたりしてファイバーや鏡を高速で揺らしてスペックルを平均化する手法が有効です。曇りガラスを回転させる方法もあります。
さて、同様の干渉がX線レーザー光が複数の原子(散乱体)を含む分子に当たったときにも生じます。この干渉パターンをフーリエ変換で逆算すれば分子内の原子の位置関係がわかります。
問題は、波の干渉は「位相」が関係しますが、強度のパターンを測定した結果には位相の情報がなくなってしまうことです。この問題は、干渉や回折を考えるときには必ず出てくる問題で、「位相問題」と呼ばれます。
これを解決するには、分子は有限個の原子でできていて、原子のないところからは散乱波は発生しない、ということを使って位相を求めればよいのです。現在のところ、位相(各原子位置と関係ある)を仮定して干渉パターンを求め、それが実験結果にあうように繰り返し計算を使って合わせこんでいきます。この原理を使う方法は、単結晶のX線回折では「直接法」と呼ばれますが、分子1個でも有効です(計算法は変わりますが)。
医療診断の超音波画像も似ていますが、その場合は散乱体が連続的に分布しているので、面倒です。色々な定式化ができそうですが、多数のピエゾ素子を使って波面を制御して情報量を増やすのが本質だと思います。

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Speckle_(interference)#Speckle_pattern から。
speckle 小さい斑点
noise texture ノイズの質感
come into prominence 注目されるようになった  prominence は 目立つこと、傑出、名声、卓越、太陽のプロミネンス(紅炎)
subjective 主体的な
objective 対象の objective lens 対物レンズ
ocular lens 接眼レンズ = eyepiece, eye lens
diffuser 曇りガラスのような「拡散板」
“The first multiscale speckle reduction methods were based on the thresholding of detail subband coefficients. Wavelet thresholding methods have some drawbacks: (i) the choice of threshold is made in an ad hoc manner, supposing that wanted and unwanted components of the signal obey their known distributions, irrespective of their scale and orientations; and (ii) the thresholding procedure generally results in some artifacts in the denoised image. To address these disadvantages, non-linear estimators, based on Bayes’ theory were developed.”
drawback 欠点
ad hoc manner その場しのぎのやり方
threshold 閾値を定める
denoise ノイズを除去する
to address these disadvantages これらの不利な点を解決するために
supposing ~ ~と考えて、~と仮定して
obey their known distributions わかっている分布に従う
artifacts 「アー」ティファクツ 人工物、データ処理中に生じた本物でない偽の信号や画像
Bayes’ theory ベイズの定理

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