2023年ノーベル医学生理学賞

2023年のノーベル医学生理学賞は、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの発明者に与えられました。これはコロナワクチンに使われたのでよく知られていますね。細胞内にmRNAがうまく入ると、対応したタンパク質が作られます。そのタンパク質が例えばコロナウィルスの表面突起のものだとすると、生体の免疫反応が誘起され、ウィルスの感染を初期に抑え込むことができるようになります。仕組みの詳細の解説は下記です(今回受賞の Weissman教授が著者)。
https://www.nature.com/articles/nrd.2017.243
mRNAワクチンの利点として、(1)安全性(病原性がなく、体内の半減期を調整もできる)(2)効率性(安定性を増し、多くのタンパク質を生産できるように改変できる)(3)生産性(生物を介さないと作れないタンパク質そのものよりも、核酸配列合成装置で合成できるため早く生産できる・・・この利点はコロナワクチンに生かされました)。
反ワクチン主義の主張で不安にならないように、EUは下記のようなページを作っています。
https://ec.europa.eu/research-and-innovation/en/horizon-magazine/five-things-you-need-know-about-mrna-vaccine-safety
DNAを改変するわけではない、というのが強調されています。
上記解説論文で知りましたが、外来のmRNAに対して細胞側の防御機構(炎症発生)が働かないように精製することが重要だ(特にmRNAが二本鎖になる不純物がダメ)ということを示し、さらにmRNAの端にくっつけて炎症を起こさせずに効率よくタンパク質合成を促す配列を地道に開発したのがもう一人の受賞者のKariko教授で、二人は共同研究していたようです。下記がNHKが触れている2005年の業績ではないかと思います。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1074761305002116
また、RNAは細胞間に分泌されているRNA分解酵素ですぐ分解されるので、やられないように脂質二重層カプセルにくるむ必要があります。実用化までに15年以上かかったのは納得です。mRNAをガンにも使おうとする研究も行われていて進展しているようです。

英語は https://penntoday.upenn.edu/news/katalin-kariko-and-drew-weissman-penns-historic-mrna-vaccine-research-team-win-2023-nobel から
therapeutic せラピューティック 治療の
Nobel prize in Physiology or Medicine ノーベル医学生理学賞
affiliated with Penn ペンシルベニア大学に所属する
“After a chance meeting while photocopying research papers” 研究論文をコピーしているときの偶然の出会いの後
“The mRNA-based vaccines elicited a robust immune response.”
elicit 引き出す、誘引する level 9
“Unlike other vaccines, a live or attenuated virus is not injected or required at any point.”
attenuate ア「テ」ニュエイト 減衰させる、弱毒化する attenuator  オーディオの アッテネータです。
“As companies worked to quickly develop and deploy vaccines…”
企業たちがワクチンを開発し展開するために働くにつれて…
deploy デプろイ  展開する、部隊を配置する level 9

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