集団遺伝学の新計算法

昨日紹介した論文の本文は購読していないと読めませんが、Supplement Materialsは無料で読めます。
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abq7487
最近の論文にありがちですが、解析過程の詳しいことはSupplement Materialsのほうに書いてあり、125ページもあります。人類の祖先の人口が90万年前に1200人まで減っていた、という大胆な推論は、色々な人の遺伝子解析の結果から、その多様性をモデル化することにより導かれました。時間については以前説明したとおり、集団遺伝学で使われるやり方で、突然変異の入る確率が一世代あたり一定であることを仮定しています。その値は1.2×10^-8です。それから新しい確率のモデルにフィッティングすることで導いています。そのモデルは、Supplement Materialsの2ページ目以降に書いてありますが、異なる集団が合流(coalsescence)する確率が無視できるほど(確率10^-4以下を仮定)時間間隔を小さくして導かれた離散的な式です。これにより従来は問題であった計算誤差の累積を避けることができた、という主張です。使った遺伝子(=人数)はアフリカの人1322人、非アフリカ人3686人の合計約5000人です。ここからかなり複雑な集団同士の交流を表す「家系図(4つくらいの集団合流がいつ起こったか)」を導いています。150万年前までさかのぼると、最初10万人くらいだった人類が1200人まで減った期間が95万年前~80万年前にあり、その間が化石が発見されていない年代(95万年前~60万年前)を説明できる、という話です。推定が正しい確率なども計算できると思いますが、まだ見つけられていません。サンプル人数が少なすぎないか?というのが今の印象ですが、ヒトのゲノムの情報量の大きさから、十分な情報量があるのでしょう。計算法、計算の加速法は面白いと思います。他の応用ができないか、という点も興味があります。

英語は同論文から
coalesce コゥア「れ」ス 合体する、合流する、融合する
fossil 化石
hominin 人類
Pleistocene プ「ら」イアスタスィーン 更新世
specimen 標本
“We dominate Earth’s landscapes, and our activities are driving large numbers of other species to extinction.”
我々は地球の景観を支配し、その活動がほかの多くの種を絶滅に追いやっている
extinction 絶滅
persist 継続する
“The decline appears to have coincided with both major climate change and subsequent speciation events.”
この人口減少は大きな気候変動とその後の種の分化事象と合致していたように見える。
decline 減少
climate change 気候変動
subsequent サブ「スィ」ークエント 引き続きおこる、そのあとの
spaciation 種の分化

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