今週とりあげたメキシコの研究所は「トウモロコシ・小麦」という名前がついていました。トウモロコシはどうなっているでしょうか?実は、トウモロコシについては1930年代という早い段階で品種改良が完了していました。ここで使われたのが「一代雑種」です。米で言う「ハイブリッド米」に対応するものです。遺伝的に均一な「純系」を2つ掛け合わせた第一世代が「一代雑種 F1」で、概念はメンデルにさかのぼります。F1の生活力が強いという「雑種強勢」という現象があり、両親を上手く選べばよい作物が得られます。
https://kotobank.jp/word/%E4%B8%80%E4%BB%A3%E9%9B%91%E7%A8%AE-31322
しかし、その子孫は遺伝的に多様になってしまうので、両親の純系は継代して保存し、使うたびに掛け合わせないといけません。トウモロコシは自分のおしべとめしべでは種ができない(他家受精、他殖性)ので一代雑種を作るのが容易だったため早くできたそうです。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsta1957/44/3/44_3_206/_pdf (pdf注意)
イネは自家受精するので難しく、自家受精できない品種を野生のものから発見して(これも日本の仕事です)交雑により遺伝子を取り入れる必要がありました。イネの一代雑種であるハイブリッド米はインディカ米を中心に中国で進化し現在大規模に使われているそうですが、日本では収量より味を重視するためか、まだそれほど普及していません(吉野家などが採用)。下記2017年の記事では今後流行りそうに書いてあります。
https://project.nikkeibp.co.jp/mirakoto/atcl/food/h_vol12/
一代雑種には2つの純系を保存する必要があり、コストがかかります(=うまくいけば儲けも大きい)。下記のように最近問題が発生しており、ハイブリッド米を民間で管理することに批判的な論説がでています。「種子法廃止(2017)」や「種苗法改正(2020)」は議論になりましたが、こういう話もあるのですね。
https://www.chunichi.co.jp/article/640456
https://project.inyaku.net/archives/9014
https://news.yahoo.co.jp/articles/68036c12242be65a86bbfc5337a6d3a5b7695d48?page=2
https://www.nouson-n.com/media/2023/07/18/8857
英語は https://en.wikipedia.org/wiki/F1_hybrid から。
hybrid 雑種
hybrid vigor 雑種強勢
vigorously stir 強くかき混ぜる
offspring 「オ」フスプリング 子孫
phenotype フェノタイプ 遺伝子型
“Gregor Mendel focused on patterns of inheritance and the genetic basis for variation. In his cross-pollination experiments involving two true-breeding, or homozygous, parents, Mendel found that the resulting F1 generation was heterozygous and consistent. ”
cross-pollination 他家授粉
pollen 花粉
homozygous ホモ接合性
heterozygous ヘテロ接合性
self-fertilization = autogamy 自家受粉
gamete ガ「ミ」ート 配偶子 (花粉と子房、精子と卵子など)
pistil めしべ ピスティる level 24 あまり使われない単語ですね。
stigma 柱頭(めしべの先端) (聖痕の意味もある) level 10
stamen おしべ ステイマン level 15
pollen grains おしべの先の花粉がついているところ https://eigojin.com/2021/02/09/kafun/
※ wikipediaによると 雑種強勢のメカニズムは
“Higher performance: As most alleles code for different versions of a protein or enzyme, having two different versions of this allele amounts to having two different versions of the enzyme. This increases the likelihood of an optimal version of the enzyme being present and reduces the likelihood of a genetic defect.”
同じ酵素で違うのを2セット持てるので効率が上がったり不具合が少なかったりするためだそうです。
allele ア「レー」リ 対立遺伝子 level 12