テロメアと細胞老化

細胞分裂の回数を制限するHayflick limit(人間の体細胞は約50回)の仕組みは、テロメアが短くなることであるとされています。テロメアは哺乳類では(TTAGGG)が多数繰り返された配列がDNAの端にくっついているもので、染色体としてまとまる時の末端の保護に役立っていると考えられています。下記wikipediaにわかりやすい写真がでています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Telomere
細胞分裂のたびに、DNAをほどいて全コピーするときに端がどうしてもコピーできないため短くなっているということです。生殖細胞と血液幹細胞は例外で、テロメアを長い状態に戻すテロメア―ぜという酵素が働いているそうです。
培養細胞分裂が最大回数まで起こった後の状態を「細胞老化」というそうですが、生物体全体の老化と一致しているかどうかは注意が必要で、wikipediaなどは奥歯にものが挟まったような書き方をしています。いろいろ読みましたが、強く関係しているというのは定説といってよいと思います。また、テロメアが分裂のたびに短くなっていって、体細胞ではテロメア―ぜが働かない、という現象が、Hayflick limitの仕組みである、というのも定説です。
そうすると、(1)テロメアの長さを測れば寿命が予測できる、とか、(2)テロメア―ぜを体細胞で発現させれば老化を逆転できる、とか考えると思います。実際それはweb検索するとたくさん見つかりますが、かなり怪しいビジネスが多いです。(1)は、測定キットが$100~$400で売っているそうですが、同じ個体でも細胞の種類によってまちまちなので、細胞を特定して精度よく測らないと何もわからないそうです。「食事によるテロメア値の変化の測定」という文献があり、「とんでも」な内容だったので驚きました。(2)は、がん細胞はかなりの割合でテロメア―ぜが活性化しているとのことなので、うっかり「若返り」のつもりでテロメア―ぜ活性化薬を飲んだらとんでもないことになりそうです。逆に、テロメア―ぜ阻害剤は抗がん剤になる可能性が考えられます。それも20年近く研究されてきていて、今臨床試験が進んでいます。しかし、魔法の薬効はないようで、限定された骨髄腫などで有効性が確認されている程度です。血液幹細胞が分裂できなくなるとたいへんなので(→致死性の悪性貧血)、副作用にも注意が必要でしょう。
https://www.geron.com/research-and-development/telomerase-inhibition/
https://en.wikipedia.org/wiki/Imetelstat

英語は適当に選んでみます。
telomere 「テ」ろミア
eukaryotic ユーカリオティック 真核生物の
chromosome ク「ロ」モソーム 染色体
monochrome モノクロ =白黒画像
chromium クロム(元素) いろいろな色の化合物があるから命名されました
somatic cell division 体細胞分裂
immortal tissues 不死性の組織
“During DNA replication, DNA polymerase cannot replicate the sequences present at the 3’ ends of the parent strands. ”
replication 複製
parent strands 親配列
奥歯にものが挟まったような言い方 talk/write as if the one/author were hiding something
senescence セネセンス 老化
senator 元老院議員、上院議員、評議員、州議会議員
senate 元老院、上院、評議会、州議会

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