nBn構造による暗視カメラ

HRL Laboratoriesのセンサー部門は、赤外線による暗視カメラに力を入れているようです。もちろん、自動運転の物体認識など民生用途もありますが、おそらく研究費の出どころは軍事用(US Department of Diffense; DoD)です。中~遠赤外線を画像としてリアルタイムで出せれば、照明無しで熱源(人や戦車など)を見ることができ、またミサイルの追尾にも使えます。争いごとは嫌ですが、技術として存在するものを直視して正確に評価することは我々専門家の責任でしょう。
https://www.hrl.com/laboratories/sel
これまで水銀カドミウムテルル(Hg_1-xCd_xTe, Mercury Cadmium Tellurium, MCTと略す)という閃亜鉛鉱型のII-IV族半導体(※こういう場合は古い族番号で呼び、12-16族とは言わない)が用いられてきました。MCTはバンドギャップをゼロから1.0eVに制御できる赤外線検出にぴったりの半導体です。また、キャリア移動度も低温で数十万cm2/Vsと高く(一般的にバンドギャップが小さい半導体は移動度が高いものが多い)、これをペルチエ素子などで冷却すれば優秀な赤外線検出器ができます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AB%E3%83%AB%E5%8C%96%E3%82%AB%E3%83%89%E3%83%9F%E3%82%A6%E3%83%A0%E6%B0%B4%E9%8A%80
が、最近は、融点が低い、有毒などの問題が欠点として意識されるようになり、代替品としてIII-V族半導体のうちアンチモンを含む InAs_1-xSb_xやAlAs_1-xSb_xを使ったデバイスが研究されています。通常のpnダイオードではMCTに比べて雑音が多いそうです。いろいろ調べてみたら、積層ヘテロ構造を作って多数キャリア(電子)に対してバリアを設けることにより雑音を減らすという考案があり、それにそってデバイス作製が行われているようです。nBn検出器と呼ばれています。物質や用途は違いますが、これは我々の研究にも使えるかもしれません。
https://www.spiedigitallibrary.org/conference-proceedings-of-spie/10624/2311494/III-V-infrared-focal-plane-array-development-in-US-Conference/10.1117/12.2311494.short
半導体中の励起キャリアのふるまいについてはwikipedia 英語版がよくまとまっています。
https://en.wikipedia.org/wiki/Carrier_generation_and_recombination
トラップで再結合するShockley-Read-Hall (SRH)再結合がIII-V族では問題で、下記博士論文によるとnBn構造はそれによる雑音抑制に効果があるそうです。
https://digitalrepository.unm.edu/cgi/viewcontent.cgi?article=1482&context=ece_etds

英語は https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/3413137/us-japanese-defense-leaders-discuss-progress-on-closer-alliance/ から

DoD = US Department of Defense 米国防総省
“US and Japanese defense leaders are “operationalizing” agreements that are deepening the treaty alliance.”
“operationalizing” 「働くようにする、実働化する」 くらいでしょうか。
deepen 深める
treaty トリーティ 条約  例 North Atlantic Treaty Organization = NATO
alliance ア「ら」イアンス 同盟
“This is a consequential time for our alliances.” 今は我々の同盟にとって重要な時期です。
consequential コンセク「エ」ンシャる LDOCEでは (1) happening as a direct result of a particular event or situation 結果として生じる (2) important, significant 重要な  ※ 1と2が意味的に重なっているというのはわからなくもないですが、英語独特の面白い単語です。DeepLは「結果的に重要な時期です」と訳しましたが、ちょっと違うと思います。
coercive コ「ア」ースィヴ 強圧的な、強制的な coercive force 保磁力
“your leadership in opposing any attempts to change the status quo by force” 力による現状変更の試みに反対する貴国のリーダーシップ
oppose オ「ポ」ウズ 反対する
status quo ス「テ」イタスクオ (ラテン語から) 現状
“They should continue dialogue with us to prevent a crisis or incident from spiraling out of control.”
彼らは危機や突発的事態が暴走して制御不能にならないように我々と対話を続けるべきだ。

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