麻薬様物質(オピオイド)が鍼刺激により体内で産生される

鍼による痛み止めの機構はendogenous opioid (体内産生麻薬様物質)が出るためというのは確立していますが、鍼刺激からそれが起こるメカニズムはまだ研究途上のようです。acupunctureとopioidで検索すると論文は300あまり出ています。鍼から電流を周波数(数Hzです)を変えて流すと、周波数によって何種類かあるopioid受容体を一種類ずつ選択的に活性化できるというのも確かなようです。鍼の手技でゆっくり回すというのがあると聞いたことがありますが、それと関係していそうです。
分子レベルの研究では、下記がopen accessなので購読していなくても読めます(2020年)。ネズミに電気鍼を行ってリアルタイムにPCRでIL-10(インターロイキン10)に対応したRNAの発現を測定したところ増えるそうです。同時に痛み刺激への応答を調べたところ痛みを感じにくくなっているとのこと。怪しそうな論文もありましたが、これは大丈夫だと思います。
https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S0753332220300883
インターロイキン10は抗炎症作用がある低分子量タンパク質(細胞間通信に使う分子の一つ)。
https://en.wikipedia.org/wiki/Interleukin_10
IL-10の作用の一つであるβ-endorphinという麻薬様物質が増えていることも測定で確認しています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%CE%92-%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3
鍼刺激でどうしてIL-10産生が増えるのかについてはわかっていないようです。
検索で引っかかってきた論文に、遅い応答のしくみとして axon reflex (軸索反射)説とNO(一酸化窒素)説がありましたが、他にもあるかもしれません。個人的にはネズミ(rat)に鍼を指すツボをどうやって決めたのか気になりますが、動物の鍼治療も東洋医学にあって、そこから習ったのかもしれません。

英語は https://en.wikipedia.org/wiki/Interleukin_10 から
It predominantly inhibits bacterial product mediated induction of pro-infammatory cytokines. 細菌産生物質を仲介とした炎症促進性サイトカインの誘導を顕著に抑制する
inhibit 禁止する 抑制する
mediate 仲介する 媒介する
predominantly 顕著に、支配的に
pro- 促進する、~に向けた
induction 誘導 an induction motor 誘導モーター
human cytokine synthesis inhibitory factor ヒト サイトカイン合成抑制因子
cytokine 生理活性タンパク質 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3
inflammation インフらンメーション 炎症
It also enhances B cell survival, proliferation and antibody production. リンパ球B細胞の生存、増殖、抗体産生を増強する。
proliferate プロ「り」フェレイト 激増する、増殖する

※まとまった結果を知るのは面白いですが、自分で実験して解明するのは相手が生き物でもあり、たいへんそうですね。

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