Archimedes Palimpsest の詳しい解説がなかなか見つからなかったですが、静岡大学のものが分かりやすいです(下記pdf)。
https://www.sci.shizuoka.ac.jp/sci/wp-content/uploads/2021/06/20101203.pdf
それによるとArchimedesの写本のインクには鉄が含まれていて、上書きしたインクは鉄がないため、紫外線と可視光の差をとるとArchimedesの方は赤く字が浮かび上がるのだそうです。絵を上書きされたページはそれができなくて、蛍光X線イメージングで鉄の像を撮影することで読めたそうです。時代によりインクの成分が違うというのはは面白いですね。
上記pdfの結論は、アルキメデスは積分をきちんと使っていたわけではなく、立体を多数のスライスとして考え、一つ一つの断片の面積比を考えていたとのこと。それでも「円柱交差問題(高校の数学で習いますね)」の答えが2200年前に出せたのだから素晴らしいです。面積比をあらわすのに、モビールの釣り合いのような「てこ」を使って記述しているのも「てこ」の発明者Archimedesらしいと思います。
さて、蛍光X線は、高いエネルギーのX線を照射して原子の内殻軌道を励起し、電子の抜けた軌道に価電子が落ちてくることにより特定のエネルギーを持つX線(特性X線)が発生します。照射するX線にはシンクロトロン放射光を、X線の検出器は昔は、SiにLiをドープして深いトラップを作り、キャリヤを吸いこませて空乏層にしたものを使っていました。この素子に高電圧をかけておき、X線が当たると、その光子1個がエネルギー(波長)に応じた数の電子正孔対をつくり、電流パルスとして検出されます。電流パルスの高さを測定して、あらかじめ素子ごとに作った校正表を見ることによりエネルギーが分別されます。液体窒素で冷やす必要があり、液体窒素が無くなった状態で高電圧をかけると素子が破壊します(100万円!壊したのを見たことがあります)。今は、半導体の純度が上がったためかLiドープは不要で、多数の環状電極を使って効率的に電子を集めているようです。
https://www.jeol.co.jp/words/semterms/search_result.html?keyword=%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AA%E3%83%95%E3%83%88%E6%A4%9C%E5%87%BA%E5%99%A8
鉄原子の特性X線(6.4keV)が検出されれば鉄原子がいることがわかります。X線を細く絞ってスキャンすれば、鉄を含むインクの画像が得られるという仕組みです。
discriminate 分別する、差別する ディスク「リ」ミネイト
indiscriminately 差別をせずに = equally
deplete 空乏させる、払しょくさせる、掃き出させる デプ「り」ート
lever てこ
mobile モビール 「モー」ビーると言う発音のようです。「モウ」バイると読むと 可動式
(例)a mobile phone 携帯電話
写本 本そのものはmanuscript、a manuscript copy、a handwritten copy
写本することは transcription
どちらも、現代では違う意味でも使いますね。
manuscript は「原稿」 「マ」ニュスクリプト
manu- は「手」、scriptは「書く」なので 「手書き」=「写本」「手書き原稿」ですね。
manipulator マニピュレーター 手のように細かく操作できる仕組み マジックハンド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%83%8B%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC
transcript は遺伝子の転写(DNA->RNA)の他に、「テープ起こし」「記譜(音楽を楽譜にする)」という意味があります。