昨日のドイツの2030年 CO2削減目標 1990年比-65%と日本の目標「2030年に2013年の-46%」のどちらが厳しいか比較するデータを見つけました。ドイツの目標は2013年比にすると-52%ですね。現在人口一人当たりのCO2排出は日・独ほぼ並んでいます。いずれにしても高い目標だと思います。
https://www.de-info.net/kiso/atomdata11.html
石炭は、今の使用量なら、まだ100年分はあるとのことですが、質の良い無煙炭や瀝青炭はとれなくなっています。
とくに、製鉄用のコークス(燃料兼還元剤)の消費量が大きいです(日本全体の14%のCO2を排出)。コークスは石炭を蒸し焼きにして作りますが、質が悪いものはエネルギー消費が大きくなったり、不純物であるSO2等発生や、無機物であるスラグの発生が増えるとのことです。
https://www.asahi.com/articles/ASP1H5TYZP1GULFA01Q.html
製鉄に炭素を使わない還元を行う(有力候補は水素)を使う技術がカギになります。水素の安全な貯留と使用技術を確立しながら、最適な還元方法を探さなければなりません。水素利用は製鉄が突破口になる可能性が高いと思います。現在は、コークスを減らして代わりに水素を導入する方向で進めていますが、コークスをゼロにすると炉の設計からやり直しになり、たいへんです。逆にそれを早く確立したところが輸出で覇権を握るのでしょう。このへんは原子力発電所と同じように、いくつかの方式への収斂が起こると思います。スケジュールを競争で前倒ししているので、かなり忙しいです。国家レベルの莫大な投資も必要です。CO2削減の義務がきちんと全世界に課せられないと、制限が緩いところでコークスを使って製鉄することになってしまうと思います。
SwedenのHYBRITプロジェクトが2016年に実験室で開発した方法(スポンジ状の鉄を作る?)でテストプラントを作り、今年の8月18日に最初の鉄を作ったようです。
https://www.ssab.com/fossil-free-steel/hybrit-a-new-revolutionary-steelmaking-technology
の下の方に動画があります。これが一番早い完全水素化製鉄プラントではないかと思います。ペレット化した鉱石を少しずつ?直接水素で還元するように見えます。水力と風力が安いSwedenだからできることで、大規模化が可能かどうかはわかりません。日本のCOURSE50プロジェクト(日本鉄鋼連盟、2008年~)は、既存の高炉を利用してコークスの一部を水素に置き換えるのと、CO2を回収することにより、ゼロエミッションを目指しています。こちらはまだ時間がかかりそうです。leap frog にやられないように応援したいです。
各社の水素製鉄の取り組み
日本製鉄(世界3位)
https://www.nipponsteel.com/csr/env/warming/future.html
→既存の高炉に水素を入れてコークスの消費を10%抑えることが中心ですが、外国は水素のみにしようとしています。
ArcelorMittal(世界2位、欧州(インドのMittal家が経営))
https://corporate.arcelormittal.com/media/case-studies/hydrogen-based-steelmaking-to-begin-in-hamburg
→図が適当です
POSCO(世界5位)
https://newsroom.posco.com/en/exploring-hydrogen-with-posco-3-the-future-of-steel-hydrogen-based-steelmaking/
→流動炉の説明図が分かりやすいです。
宝武鉄鋼集団(Baowu group 世界1位、4位は河北鋼鉄集団 HBIS group)ここはSwedenからの技術導入のようです。
https://toyokeizai.net/articles/-/434365
https://www.h2bulletin.com/baowu-steel-hydrogen-emission/
Chinese steel producers have been under severe pressure to reduce carbon emission given steel industry is one of the significant contributors to the country pollution.
ここでのgiven that=considering thatは副詞節を導く接続詞で、「~を考慮すると」
provided that = if 「~の条件下では」「~である限りは」
https://esqlabo.com/tech-english-given-that-provided-that/
hydrogen refueling station 水素供給ステーション
mining industry 鉱業
fossil fuel 化石燃料
Fossil free electricity will be a key enabler to achieve a decarbonation in the future.
enabler 可能にするもの ← enable
decarbonation 脱炭素化、脱炭酸
高炉 blast furnace
銑鉄 せんてつ pig iron 炭素4%、融点がもっとも低い(Fe-Cの共晶組成、1147℃ 4.30%)
鋳鉄 ちゅうてつ cast iron
鋼 はがね steel 炭素量0.04~2%
leap frog (蛙飛びの意味) 既存技術を持たない者がしがらみなく最新技術を開発して市場の支配者になること。