昨日は分子振動が混じる「フェルミ共鳴」のそもそもの原因は、振動しているものが共通であることにある、という話をしました。固体中での原子の振動は熱や音波として現れます。音を二方向からいれると混じるはずですが、積極的に使っている例はないようです。形状の影響が大きいからかもしれません。
調べていたらいくつか面白いものが引っかかりました。木琴とマリンバでは倍音が違うために音色が違うそうです。木琴は基本波と3倍波、マリンバは基本波、4倍波と10倍波だそうです。マリンバは他の楽器(弦楽器や管楽器など)に合っているのでオーケストラに溶け込み、木琴は合っていないので目立つとのこと。木片を削って調節しているようです。
音波の場合は形状の影響の方が大きいという例ですね。
https://www.yamaha.com/ja/musical_instrument_guide/marimba/structure/structure003.html
Orchestration Tip: Harmonic Spectra of Xylophone vs. Marimba
もう一つは以前紹介したことがあるかもしれませんが、球状の表面弾性波センサーです。硬い水晶を球状構造にすることで表面弾性波を多数回(100回など)周回させ、球表面の一部につけたセンサー膜による減衰を高感度で測り、「人工鼻」を作るという考えです。
https://xn–ballwave-y38zpd.jp/technology/bwtechnologies.php
英語は、https://orchestrationonline.com/orchestration-tip-harmonic-spectra-of-xylophone-vs-marimba/ から。
xylophone 「ザ」イろフォン 木琴
harmonic 倍音
composer 作曲家
score 譜面
“Why is it that the first instrument (xylophone) can ring out easily against massive orchestral textures while the other (marinba) disappears quickly into a mf cushion of winds and strings?”
instrument 楽器
mallet instrument マレット打楽器というようです。 mallet は「木づち」で、木琴やマリンバを叩く特殊な「ばち」です。
“an idiophone’s overtones can be adjusted by reducing mass between its nodes. So part of a percussion instrument builder’s job is to fine-tune the harmonics of each tone bar further, and this is what gives each mallet instrument its unique character”
idiophone は木琴やマリンバの1個の板のことのようです。
振動板の裏側を削ることで振動の「腹」(antinode)を積極的に作ることができ、どこに作るかによってそれぞれのn倍音の強さを変えられる、というのは納得の技術です。振動板の裏側は、マリンバはえぐれていて、木琴は波打っているそうです。昔の人は耳と試行錯誤でやったのでしょうか。偉いですね。
振動板のどこを叩くかによっても最初に出る音は変わるでしょうが、調べた範囲では演奏技術としては使われていないようです。どこを叩いても急速に倍音が混合して同じ音色になっていくのでしょう。フェルミ共鳴に似ていると言ったら言い過ぎでしょうか。