ペルチエ効果と新材料開発

個人用の冷房器具と言えば首にかける扇風機で、私も買いました。本当に暑い時はダメですが、非力な冷房でも我慢できる範囲が広がった感じはあります。
首を冷やすタイプのペルチエ素子もあり、まだ買っていませんが、脳に行く血流を冷やすという意味では効果があるかもしれません。評価コメントもまあまあです。

ただ、首は1つしかないので扇風機型とペルチエ型の両方をつけるわけにはいきません。合体したものもありますが、2万円以上の高額になります。
ペルチエ素子は熱を輸送するだけではなく電気抵抗による発熱(Joule heating)もしてしまうので、上記10Wの大部分の発熱が加わった熱を外に放出する必要があります。そのためにファンがついていて、熱風が外側に噴き出すはずです。
また、消費電力も問題になります。上記商品は10000Ahのリチウム電源で3時間しかもたないそうです。
ペルチエ素子の効率を上げる必要があり、様々な研究がおこなわれています。考え方としては、ペルチエ効果は高ドープされた半導体で起こるのですが、
(1)ペルチエ効果は、電流がエントロピー(=熱÷絶対温度)を輸送することを利用するので、電子のエントロピーが高い物質を探す
(2)低温側と高温側の間で熱伝導が起こるとせっかく冷たい側と熱い側が分かれたのに元に戻ろうとするので、熱伝導を低くする。
(3)電子が流れるときに電気抵抗が大きいとJoule heatingが起こってしまうので、電気抵抗を下げる。
(4) (2)(3)の実現には、熱伝導を起こすフォノンと電気抵抗を作る電子波の平均自由行程は違うので、フォノンに対しては無秩序なアモルファスに見え、電子に対しては結晶に見える物質 phonon glass electron crystalを作ればよい。それにはナノワイヤの複合体などが有望。
(5)エネルギーの低い電子は熱を効果的に輸送しないので、それはせき止めるほうが良い(Energy filtering effect)。これは10年くらい前から注目されている効果です。
上記(1)~(5)は学問的には新しいコンセプトだ!として論文がワーッと書かれますが、実用にはなかなか結び付かず、産業界は新物質探索には懐疑的だと聞いています。ただし、Bi2Te3-Sb2Se3等の確立された系の実用品への応用は盛んに行われています。首を冷やすものもその一つです。

英語は、https://en.wikipedia.org/wiki/Thermoelectric_effect から。wikipedia も多くの人が見ない項目だと物議をかもすことがありますが、これはreferenceが不足している問題はあるみたいですがよくまとまっています。
”This article needs additional citations for verification.”
verification 証明
“he term “thermoelectric effect” encompasses three separately identified effects: the Seebeck effect (temperature differences causes electromotive forces), the Peltier effect (thermocouples create temperature differences), and the Thomson effect (the Seebeck coefficient varies with temperature). ”
encompass ~に渡る、~を網羅する
electromotive forces 起電力 の英訳です。EMFと略す。
“The Peltier coefficients represent how much heat is carried per unit charge. ”
per unit charge 単位電荷あたりに
“Thermoelectric heat pumps exploit this phenomenon, as do thermoelectric cooling devices found in refrigerators.”
exploit 受験英語では搾取する、と習いますが、このように「利用する」を強めた意味で使うことも多いです。
refrigerator 冷蔵庫、冷凍機 発音は口慣らしをするべき単語です。「フリッジ」でも通じます。
“Such refrigerators are useful in applications where their advantages outweigh the disadvantage of their very low efficiency.”
outweigh = out + weigh アウト「ウェ」イ ~の方が重要である weigh は重さを測ることです。
“The second Thomson relation is Π=TS.
This relation expresses a subtle and fundamental connection between the Peltier and Seebeck effects. It was not satisfactorily proven until the advent of the Onsager relations, and it is worth noting that this second Thomson relation is only guaranteed for a time-reversal symmetric material; if the material is placed in a magnetic field or is itself magnetically ordered”
Onsager relations オンサーガ―の関係式 (オンサーガ―の相反関係、ともいう) 非平衡熱力学の基本式です。
time-reversal symmetry 時間反転対称性
※ここに磁性が関係するのは面白いですね。効果が大きくなる方向に行くならばいいですが。じっくり考える価値があるかもしれません。

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